077032 ランダム
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Lee-Byung-hun addicted

Lee-Byung-hun addicted

第5話

「釜山より愛を込めて」第5話




揺はカジノは二度目だったが、

前回もギャンブルのことは良くわからなかったので、

やってもルーレットくらいだった。

意外に小心者なのだった。

「えっ、ポーカーもやったことないの?」

びっくりするビョンホン。

「そんなに驚かないでよ。だってよくわからないんだもん。教えて」

「しょうがないな。じゃ、一緒にやろう。」

「いいですか?」

ディーラーと一緒の卓の人に許可をもらうと

ビョンホンは揺を椅子に座らせて自分はその後ろに立った。

ビョンホンはカードを持つ揺の耳元で、

次どうするかルールを説明しながら指示を出した。

揺はその耳元でささやかれるのがこそばゆくてゲームの最中に何度もくすぐったがって笑ってしまい、となりのマダムに咳払いをされた。

「すいません・・・」

そんなことでしゅんとなる揺を見るとビョンホンは面白くて可愛くてたまらなく愛おしくなる。

そして、またわざとくすぐったいように耳元でささやいた。

「だから、くすぐったいってばっ!」

笑いながら揺はつい声を出しビョンホンの腕を叩いた。

クスクス笑うビョンホン。周りに謝る揺。

ふたりのいちゃつきに隣のマダムはついに切れて、

ゲームを降りて他のテーブルに移ってしまった。

(もう、悪戯好きなんだからっ!)

揺はビョンホンにもう近寄るなとジェスチャーして彼を遠ざけた。

ちょっと離れて揺のカードを覗き込むビョンホン。

揺はルールが良くわからないせいか恐ろしく大胆にカードを切っていく。

「えっ!それ・・」

「ぐぇっ!それも?!」

いちいち後ろでつぶやくビョンホンに揺は振り返って

「うるさいよ」と日本語で言った。

「はい、すいません。怖え~~っ。」

とビョンホンは小声で言った。

それでも、ビギナーズラックなのか揺は数回勝つことができた。


「何だ、意外と簡単ね。」

カウンターでギムレットを飲みながら揺は言った。

「何が『意外と簡単ね』だよ。

あのカードだったらもっと楽に勝ててたのに」

ショットグラスを片手に笑いながらビョンホンが言った。

「まあ、君のウイークポイントがわかったからいいけどね。」

「何それ。何だか気になるな」

揺はそういうと化粧直しに立った。

ビョンホンは手持ち無沙汰になり店内を見渡した。

すると、ひとりの男が必死で誰かを探し回っている姿を見かけた。


揺は化粧室からの帰り、

通路でこの時間この場所に不似合いな少年と出会っていた。

「僕、ここで何してるの?」揺は少年に尋ねた。

「お父さんを探しています。」彼はしっかりと答えた。

「お父さんはカジノにいるのかな」

「わからない。急なお仕事で出かけちゃって。

僕、お部屋で待ってるように言われたんだけど、

怖くなって出てきちゃったんです。」

「僕、お名前は?」

「ハン・ミンチョルです。」

「そう、素敵なお名前ね。

じゃあ、お姉さんと一緒にお父さんを探そうか。」

少年は力なく頷いた。

そして揺の手をぎゅっと握り締めた。

揺はとりあえず、ホテルのスタッフに声をかけ、

少年の父親を探してもらうようにお願いした。

ホテルのマネージャーは少年を引き取ってホテル側で探すことを提案したが、

少年は揺から離れようとせず結局揺は付き合うことになった。

「ちょっとお姉さん人を待たせてるから一緒に来てくれる?」

揺はそういうと少年とホテルのスタッフを伴ってビョンホンの元に帰ってきた。

「遅かったね。すっごい厚塗りしてきたの?」

ビョンホンは笑いながらそう言った後、

揺が少年を連れていることに気がついた。

「もう、一人生んで育ててきたの?」

「何、馬鹿なこといってるのよ。

この子迷子になっちゃったみたいでね。

今お父さん探しているところなの。」

「そっかぁ~。迷子か。お前、名前は?」

ビョンホンがそう聞くと

「ハン・ミンチョルです。

お姉さん、このおじさんは誰なんですか」

少年は怪訝そうにそう尋ねた。

揺はクスッと笑うと

「このおじさんはね、おねえさんのお友達」

そういってビョンホンをチラッと見た。

不愉快そうなビョンホン。

「何か納得できないなぁ」

「この子のお父さん探してから部屋に戻るから先に帰っててくれる?」

揺はビョンホンにそういった。

「いいよ。僕も一緒に探すよ」

ビョンホンがそういうと

「おじさんは帰っていいです。」

とミンチョルが揺の影に隠れながら言った。

「このお姉さんはお兄さんの大切な人だから置いて帰れないの。」

ビョンホンがそういうと

ミンチョルは今にも泣きそうな顔になった。

「わかったよ。じゃあ、特別にちょっとだけ貸してやる。

いいか、ちょっとだけだぞ。」

「ビョンホンssi相手は子供だから。

そんな子供みたいなこと言わないの」

揺は呆れて笑いながらビョンホンに言った。

「じゃあ、とにかく探そうか」

揺がそう言ってミンチョルの頭を撫でた時、

「ミンチョル!」

と呼ぶ声が聞こえた。

「あっ、お父さんだ。」

すると、さっきビョンホンが見かけた誰かを探し回っていた男が近づいてきた。

「ミンチョル、お部屋で待っていなさいと言っただろ。

ダメじゃないか。お父さんずいぶん探したんだぞ。」

そういうと彼はミンチョルを抱きしめた。

「良かったね。見つかって」

揺はミンチョルに微笑みかけた。

「ありがとう。お姉さん。

お父さん、このお姉さんが一緒に探してくれたんだよ」

「ご迷惑をおかけしたようで申し訳ありません。

ありがとうございました。

私はハン・ギジュと申します。

事情があって男手ひとつで息子を育てているものですから、

この子には何かと寂しい思いをさせてしまって。」

「お一人でお子さんの面倒を見るのは大変ですね。

私は別に何もしていませんから。お気になさらないでください。」

ビョンホンは横でそんな三人の会話を聞いていた。

ハン・ギジュ。

高級そうなスーツを身につけセンスもいい。

話し方も知的な感じだし、身のこなしもいかにもエグゼクティブくさい。

一体何者なんだろう。

「お連れの方にもご迷惑をおかけしたのではないですか。」

そういってギジュはビョンホンを見ると

「あっ、イ・ビョンホンさんですよね。

そうですか。

せっかくのお休みでおくつろぎなのに大変申し訳ないことをしてしまったようですね。」

と言った。

そして自分がGD自動車の社長であること。

こんなところで仕事の話も何だが、

近々発表する予定の新車のCMにオファーする予定であることを告げた。

「これも何かのご縁かもしれません。

今後ともよろしくお願いします。」

「いえ、こちらこそ。」

ビョンホンはビジネスライクな返事をした。

どうしてなのか自分でも良くわからなかったが、

素直に親しくはなれそうにない気がした。


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